「夜述懐」
夏の夜も ねざめがちにぞ あかしける
世のためおもふ こと多くして
大意:短い夏の夜は殊に安眠したいが、国の為め、世の為めあれこれと思ひ廻らすことの多いので、安らかに寝通すことが出来ないで、覚めがちに、夜を明かしてしまふよ、との御意。
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世の中は たかきいやしき ほどほどに
身をつくすこそ つとめなりけり
大意:世の中に生まれ来たる時は、貴賎上下の差別はさまざまに分かれて居るであらうが、それが世に処するには其れぞれ身分に相応して(ほどほどに)、自分の誠心の限りを尽すのが務めである。