「家」
ことそぎし 昔の家の つくりさま
今も田舎に のこりけるかな
大意:手を省いた(こと削ぎし)質素の造り方であった昔の家が、今の大厦高楼の家の華美を競ふ世にも、田舎の方にはまだ残って居ることであるよ。
「島」
うしろには いつなりにけむ 漕ぐ舟の
ゆくへはるかに みえし島山
大意:船に乗って行く前途に遠く遠く見えて居た島は、もう何時の間に後背になったのであらうか、我が乗る船は何時其処を漕ぎ抜けたのであらう、思へば船脚は早いもの、島といふものは、おもしろい景色を見せるものである、の御意。